【ゲーム論】MORPGとコミュニケーションの強要

ワールドオブウォークラフトの大ヒット以来、エンドコンテンツに複雑なギミックを用いるMMORPGが本当に増えたように思える。

元々、MMORPGは、ただひたすら敵をクリックして狩るだけの単純なものだった。これがなぜ面白かったのかは『価値観の共有』がうまく出来ていたからである。しかし、今のMMORPGは、安直に『MMO=コミュニケーション』だと誤解し、いかに他人とコミュニケーションを取らせるかにこだわっているように見える。

その結果出てきた問題が今回のテーマである『コミュニケーションの強要』だ。

先に触れた『複雑なギミックの存在するエンドコンテンツ』も、攻略に意思疎通が必要だったり、誰かが失敗するとみんなに迷惑がかかるようなものが非常に多い。

今日はこの『コミュニケーションの強要』について語っていきたいと思う。




固定された人数制限の問題点

かなり昔、あるゲームを遊んでいた時のことなんだけど、そのゲームは基本的に4人でPTを組んで攻略するゲームで、僕はそのゲームをリアルの友達二人と、その友達の友達の計5人で遊んでいたんだけど、ある困った問題がよく発生していた。

それは、5人全員インしてしまった時。
どう別れればいいのか、微妙な空気が流れる。

まぁ、上限人数が少ないのはハード的な制約や、ゲーム性に関わる部分もあるので仕方が無いことではあるのだけど、人数に応じて難易度が変わるようなシステムではない場合、友達同士でワイワイ遊んでいるところをわざわざ2、3に別れて野良と遊ばなければならない。

大してコミュニケーションを必要としないコンテンツなら特に問題は無いんだけど、『意思疎通が必要な複雑なギミック』『失敗すると迷惑をかける難易度』だとかなり抵抗がある。

逆の立場なら、野良でPTに入ったつもりが、他のプレイヤー全員同じギルドに所属しているようなもので、特にボイスチャットを使っていると、普通のチャットはなかなか使わない。

野良で参加した方は、裏で悪口を言われているのではないかと不安になることもあるだろう。


実装直後しか攻略を楽しめない

『攻略に学習が必要なコンテンツ』は、純粋に攻略を楽しめる期間が実装後1ヶ月も存在しない。
さらに、海外先行実装の場合、その期間すら全く無いともいえる。

なぜそうなるのかというと、自ら攻略方法を見つけることよりも、コンテンツをクリアした報酬や達成感(優越感)を目的とするプレイヤーが大多数だから。

MMORPGはオフゲと違ってコンテンツの寿命を長引かせる必要がある。
そうなると、何度もクリアすることを前提として報酬が決められる。

つまり、報酬の取得が遅れれば、それだけ『機会損失』につながるため、必然的に攻略方法を探る余裕がなくなる。

上記を踏まえた上で、何を重視してゲームをプレイするかは人それぞれであり、攻略方法を自力で見つけたいプレイヤー同士が4人以上集まることはまずありえない。

ニートならまだしも、社会人が何人も集まって、攻略方法を探っていたら、次のコンテンツ実装までに間に合わないだろうし、後から自力で攻略方法を見つけたと言っても、みんなが何度もクリアした後では評価されないし、本当かどうかも証明できない。

つまり、実装直後以外では、攻略方法を自ら探すような楽しみ方は出来ない。


オートマッチの重要性

オートマッチはコミュニティの固定化を防ぐだけでなく、気軽にPT向けコンテンツを楽しむためにとても重要な機能だと言える。しかし、多くのMMORPGでこの機能はただ簡単にPTを組むだけの機能しか提供していない。

コンテンツ実装初期の場合は、攻略を目的とする人が多いため、特に問題は無いんだけど、少し時間が経てば、繰り返し攻略する効率プレイが大多数を占めることになる。そうなると、本人が望むか望まないかに関係なく『寄生』という問題が発生する。

しかし、決まったプレイスタイルを求めるプレイヤーは募集(固定)で行って下さいと言うのが開発者の考えだ。

これにより、気軽にPTを組むことと同時に、効率を求めるプレイスタイルは否定され、『コミュニケーションの強要』に繋がってしまう。

目的の異なる物同士がオートマッチで混在してしまうというのは『価値観の共有』の概念から見ても問題があると言える。


濃縮されるコミュニティ

ギミックが複雑なのに何度も何度も攻略が必要となると、毎回野良を募集する(もしくは探す)のはとても面倒だし、ギスギスする原因にもなるので、野良で続けるのは難しい。

大抵は固定PTを組むわけだけど、人間関係が固定化されるため、ギルドに参加していると派閥が出来る原因になるし、『同調圧力』により、気軽に遊べなくなってしまう。

具体的には、何か特別な理由が無ければ固定を休むことが難しいし、少し間を置きたいと思っても、大抵はコミュニティとセットとなってしまうので、固定だけ抜けるというのも難しい。

さすがに、みんながエンドコンテンツをしている時に、1人別のことをするのは気まずいし、固定に別の人が入れば、それはそれで気まずい。

だから、問題があっても我慢して固定に参加し続けるわけだけど、その問題が解消されなければ、最終的には引退という選択肢をとることになる。

勿論、復帰しても同じ問題が付きまとうため、戻りにくくなってしまう。

ギミックゲーは人間関係で疲弊することが多く、プレイヤー視点では何一ついいことは無いように思える。


過疎が過疎を呼ぶ

こういったPT必須の高難易度コンテンツは、それに見合った報酬が設定されている為、あっという間にコンテンツを消化されないように、週制限をかけている場合がほとんどである。

そのため、アクティブなプレイヤー数が減ると、極端にPTを組みにくくなってしまう。
PTを組むための待ち時間が長くなり、それが原因で人が減り、さらにPTが組みにくくなる悪循環。

これは、マーケットシステムにも言えることだ。

ランダムオプションや、個性的なビルドが楽しめるトレハン要素の高いゲームは、人がいなくなると自分のキャラクターに合う装備が手に入らなくなり、完全にゲームとして成立しなくなる。

ギルドシステムなんかも、人が増えるほどバフや特典も増えるような仕組みだと、無理に人を集めなければならなくなるし、人が集まらなければ逆にモチベーションを下げることになってしまう。

『コミュニケーション』にこだわると、人が減って『コミュニケーション』が取りにくくなるほどゲームとして破綻するのは当たり前のことだろう。


最後に…

昔のMMORPGは単純なクリックゲーだったけど、目新しさと、終わらないレベリングによる経験値という最大の帰属要素があったため、『価値観の共有』がうまくできていた。

MMORPGの代わりに流行ったソシャゲは単純なポチポチゲーだったけど、やはり『価値観の共有』がうまくできていたから流行したのだと僕は思っている。

そういう意味では、本質的なMMORPGブームはいまもなお続いていると言えるのかもしれない。

ソシャゲも技術の発展とともにMMORPG化することが考えられるけど、『コミュニケーション』にこだわり『価値観の共有』をおろそかにすれば、衰退することは間違いないだろう。

昔のMMORPGは自然と人が集まり、自然とコミュニティが出来上がったものだけど、今のMMORPGは『コミュニケーションの強要』により、まるで出会い系のような不自然なコミュニケーションが増えたように思える。

MMORPGはその特性上、コミュニケーション能力に問題を抱えている人が多くなる傾向にある。
それこそ、凶悪犯罪者でも周りの目を気にせずにコミュニケーションを楽しめるというのもMMORPGの魅力の一つでもあると言える。

だからこそ、コミュニケーションを強要せず、気楽にコミュニケーションを楽しめるようなゲームシステムを構築するのが重要なのではないだろうか。

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