【ゲーム論】MMORPGと価値観のリセット

MMORPGの育成におけるゲームデザインをタイプごとに分類すると、以下のようになると思う。
◇キャップ開放(縦スケール)形式キャップ開放やエンドコンテンツの追加等、縦方向のアップデートがメインのタイプ。
ワールドオブウォークラフトや、FF14等、最近のMMORPGでよく採用されている。

縦方向のコンテンツ追加により常に新しい経験が出来る。また、プレイヤー間の差が適度に縮まる為、ライトからヘビーまで幅広く価値観を共有させることが出来る。反面、レベルデザインのパターン化や、積み上げた価値観がすぐに崩されるのでゲーマーからは敬遠されがち。
◇転生(部分リセット)形式転生をすることで、育成し直す代わりにキャラクターが少しだけ強くなるタイプ。
マビノギや、 Steambirds Alliance などで採用されている。

コンテンツを何度も再利用できる上に、初めからやり直すことで、少しずつ強くなっていく感覚を楽しめる。プレイヤー間で大きな差が出にくいので、遊びの幅を合わせやすいのも魅力。反面、効率プレイになりがちで、それに加えて同じことの繰り返しになる為、飽きやすい。
◇ビルド構築(横スケール)形式いろいろな種類の装備を集めたり、個性的なキャラクターを育成したりするタイプ。
ラグナロクオンラインや、ソーシャルゲームでよく採用されている。

敵やコンテンツに対して様々な属性(傾向)を付与し、それに合わせて育成や収集に多様性を持たせることで横に広い遊び方を楽しむことが出来る。その分、バランス調整が難しく、縦方向へのアップデートがしにくいが、価値観を維持しやすいのも魅力。
◇完全スキル制形式戦闘と生活を含めた共通の成長ポイントに上限を設けることで役割をもたせるタイプ。
ウルティマオンラインや、マスターオブエピックで採用されている。

遊び方の変化は少ないが、プレイヤー間の差が出にくく、価値観が変動しにくい。成長を楽しむというよりはプレイヤー間のやり取りがメインで、純粋に仮想現実としての生活を楽しむMMORPGと言える。
この分類は、あくまでも度合いの問題で、どれか一つに属するというわけでは無い。そして、どのMMORPGも多かれ少なかれ『キャップ開放形式』に当てはまると言える。

今回は、上記のどの形式とも違う、『リセット形式』のMMORPGの可能性について、Path of Exile(POE)を例に考えていきたいと思う。


リセットを前提としたデザインのPath of Exile

知らない人もいると思うので、POEがどんなゲームなのか、簡単に紹介したいと思う。

20181023_101.png

これはこのゲームのパッシブスキルツリー。これ以外にも、文字通りユニークな性能を持ったユニーク装備や、スキルが豊富にあり、ビルドゲーとして非常に奥深い遊び方が可能となっている。

参考動画

これだけ複雑なゲームではあるものの、公式のフォーラムに、自分の考案したビルドを紹介できる専用のスペースが設けられているので、ライトプレイヤーは、ヘビープレイヤーが考えたビルドで自分に合ったものを選ぶことが出来、敷居はそれほど高くない。

このゲームがなぜリセットを前提としたゲームデザインをしているのかというと、『リーグ』という期間限定のサーバーが定期的に開かれるところにある。

Leagues.png

この期間限定サーバーの特徴は以下の通り。
・最新の大型アップデートが先行して適用(テスト)される。
・定められた目標をこなすことで限定のハウジングアイテムやペット、コスチュームが手に入る。
・終了時に、常設リーグへデータが移される。その際、アップデートも同時に適用される。

これにより、今まで実装されたコンテンツを腐らせることなく、常に新鮮な市場を楽しむことが出来る。さらに、本来ちゃぶ台返しと言われるバランス調整が、ゲーム性として評価される。

ある意味、オンラインゲームの最初の賑わいを楽しむことを主体に置いたゲームデザインと言える。

ちなみにこのシステムは『シーズン』という呼称で『ディアブロ3』にも採用されている。


『リセット形式』のMMORPGの可能性

僕にとってはMOもMMOも大きな違いは無いと思っているので、POEにおける『リセット形式』のMMORPGは既に確立したタイプと言える。ある意味、名前を変え、運営を変えて再始動する量産型MMORPGもこのタイプと言えるかもしれない。

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違いは、リセットを前提にしたゲームデザインかどうかといったところだろうか。

前述のPOEでは、常設リーグは価値の失ったデータの行先として『ゴミ箱』と呼ぶプレイヤーも少なくないが、この手法自体は既存のMMORPGにも流用することが可能だと言える。

例えば、既存のMMORPGでも大型アップデートのタイミングで新規サーバーを立ち上げることはよくあるけど、それはあくまでも新規のプレイヤーが対象にすぎない。これをPOEのようなリーグに見立て、既存のプレイヤーを含む一つのイベントに仕立てれば、新たな『リセット形式』のMMORPGも実現できるはずである。


最後に

僕が子供の頃、クラスメイトがドラゴンボールの話で盛り上がっているのが苦痛だった。その理由は、バトル漫画化した後のドラゴンボールを好きになれなかったから。僕は子供ながら、ドラゴンボールが毎週戦闘シーンばかりで、しかも全然進まない。早すぎて見えない状態で戦ってたりするのを内心冷めた目で見ていた。

ドラゴンボールに限らず、バトル漫画自体、パターン化された内容やインフレに、今までの努力や成長が都合のいい、なんか安っぽいものに見えて嫌だった。でも、僕の気持ちとは裏腹に、大抵の作品はバトル漫画化してからの方が人気が高かった。

『価値観の違い』

本来ならばその言葉だけで終わることなんだけど、無視できない問題に発展してしまう。それは、僕の好きな漫画もバトル漫画化してしまうということだ。

これは、MMORPGにも同じことが言える。

長期連載しやすく、子供から大人まで受けるバトル漫画。
長期運営しやすく、ライトからヘビーまで受けるキャップ開放形式のMMORPG。

ある意味、MMORPGはバトル漫画化していると言えるだろう。

昨今のクリエイターは、この『バトル漫画化したMMORPG』が全てだと思っている人がとても多い。でも、それって本来のMMORPGらしさとは対極にあるような気がしてならない。


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