【ゲーム論】MMORPGと遊びの変化

ここ最近、『価値観の共有』に関わる部分を中心に焦点を当ててきたので、今回は、純粋なゲーム性の部分について触れたいと思う。

今日のテーマは『MMORPGと遊びの変化』。

簡単に説明すると、MMORPGは長期的に遊ばれるわけだけど、やっていることに変化がないとつまらないよねっていうこと。

例えば、アップデートが入って、レベルキャップと新しいエリアが解放されたとする。
そのエリアの敵は、既存の敵よりも攻撃力とHPが1割高い。
プレイヤーのレベルを上げると、攻撃力とHPが1割高くなる。

……これって、つまらなくない?

結局、育てても変化がないなら、『目標』が持てないからモチベーションも上がらない。

今回はこの遊びの変化について、実際のタイトルを例に説明していきたいと思う。
尚、僕が遊んでいた当時の話なので、今は違うかもしれない点に注意して欲しい。




Troveから見る遊びの変化

Troveでは、キャラクター固定で職業を自由に切り替えて育てられるシステムが採用されている。ステータス割り振りは無く、個性をつけるのはギアに付与されるランダムオプションのみとなっている。

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このランダムオプションは、付与される位置によってある程度固定されており、職業によって重要なステータスがほぼ決まっている上、ジャンケンのような三つ巴のようなバランスでも無いので、選択肢はほとんどない。

また、Troveは、自動生成されるフィールドのダンジョン内にいるボスを倒しながら経験値やギアを集めるわけだけど、プレイヤーの強さに応じて入れるエリアが分かれている。

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しかし、中身はほとんど同じで、13段階に分かれている難易度の違いは、敵の攻撃力とHP、ドロップ品の数値が高くなるぐらいである。

これは、レイドダンジョンにも同じことが言える。

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難易度は『Normal』『Hard』『Ultra』の3つに分かれているけど、やっぱり敵や報酬の数値がスケールするだけで、内容に変化は無い。

一応、特殊なスキルが付与されている『Empowerd Gem』というものが存在するので、少しだけ個性をつけることは出来るものの、入手はさして難しくなく、カンスト後の成長要素は、ひたすら同じことを繰り返して、攻撃力と防御力のパラメーターを高めるだけと言える。

Troveは過去にいい点ばかり取り上げてきたけど、肝心のバトルコンテンツと成長要素は単調で飽きやすく、とてももったいない作りになっている。


エターナルシティ2から見る遊びの変化

エターナルシティ2と3に関しては、今までにもいくつか記事を書いてきたけど、2に対して3はかなり残念な出来に感じたので、その部分について比較しようと思う。

まずは、エターナルシティ2のビルドシステムから。

20181030_004_EC2.png

これは職業とパッシブスキルのリスト。
最初に、中心にある8個の中から一つだけ職業を選択し、以後は、一定の条件を満たすことで、隣接するマスのパッシブスキルを選択していくことが出来る。

20181030_005_EC2.png

こちらはスペシャリティ(ステータス)の画面。
EC2では、レベルが上昇すると、ステータスにポイントを割り振ることが出来るわけだけど、ステータスには、それに関わるパッシブスキルが存在し、ステータスポイントに応じて、対応するパッシブスキルの効果が上昇する。

パッシブスキルの種類は、例えば『体力増加』だとHPが上昇、他にも『移動速度』や『リロード速度』といった感じに、かなり細分化されていて、条件を満たすことで得られるポイントを消費して、スキルレベルを上げることが出来る。

また、各武器には、その武器を上手に扱うための推奨ステータスというものが複数存在し、これが足りないと、玉がばらけたり、リロードに時間がかかったり、ダメージが出なかったり、玉が重くて足が遅くなったりと、うまく扱うことが出来ない。

だから、EC2のビルドシステムは複雑で分かりにくいものの、個性を出しやすく、どの時点で武器を更新するかといった部分で、変動し、考えさせられ、それがゲーム性につながりとても面白かった。

次にコンテンツ周りについて。

20180322_ec2_001_メダル_

これは、メダルシステムの画面。
ゾンビの討伐数や、各種コンテンツのクリア数に応じてメダルが貰え、その報酬として、各ステータスに対応したスキルポイントを得ることが出来る。

ただし、やりたくない項目は、コンテンツクリア時にもらえる褒賞ポイントと交換することでも達成させることが出来る。なので、遊び方を強制されることなく、ほぼすべての行動がキャラクターの成長に繋がっており、死にコンテンツの無い、非常にやりがいを実感できる作りとなっていた。


エターナルシティ3との比較

エターナルシティ3の場合、体系、前職、兵科、スペシャリストの4つによってビルドを構築することになる。

20181030_006_EC3_2.png

体系はS、M、L、XLの4種類。前職は全部で12種類。
画像にある通り、それぞれ上昇する能力値に違いがある。

武器は、主武装、副武装、重火器の3つを同時に装備可能で、兵科の選択によって、使用可能となる武器の種類が変わる。

兵科ごとにツリーが分かれているけど、5レベルごとに一つ選択できるので、内部的な選択は、早いか遅いかぐらいの違いしかない。

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スペシャリストは、10レベルごとに1つ選択できる(重複不可)。
これも対応するステータスにボーナスが入る。

この時点で察しがつくと思うけど、EC3では、1週間も遊べば、ほぼビルドが完成してしまう。その後の成長は、個性が消えていき、数値が高くなるだけだ。

その代わりに、EC2とは違い、装備にランダムなオプションが付与される。

20181030_010_EC3.png

だから、トレハンを通じて装備を更新するわけだけど、僕が遊んでいたころは、一部のコンテンツでのみ最高品質のものを入手することが出来た。そのため、死にコンテンツが多く、ひたすら同じコンテンツを繰り返すという、非常につまらない作りだった。

ちなみに、EC3では、一見トレハン要素が高そうに見えるけど、ここにも致命的な問題が存在する。それは、このゲームの強化システムの部分。

強化には、+1とか数字が増えて性能が上がる『クラスアップグレード』と、任意のオプションを選択して上げていく『改造』の2種類が存在するんだけど、どちらも、強化に成功するたびに、成功率が下がっていく。

それも、ただ失敗するだけでなく、数値の減少や、壊れる可能性も高くなるので、ある程度の強化値からは課金による強化が必要になる。だから、一度武器を課金強化してしまうと、更新のたびに課金強化が必要になる。

さすがに青天井の強化システムに、そう何度も課金するわけにはいかないので、武器やオプションを厳選することになるわけだけど、課金するタイミングが計れないし、後から良オプションが来たら萎えるしで、折角のトレハン要素が全くかみ合っていない。

まさに『エンドコンテンツが課金』のゲームといえる。


Path of Exileから学ぶ遊びの変化

前回紹介したPOEは、『遊びの変化』が非常に激しいゲームと言える。

例えば、パッシブスキルの中でも、キーノードと呼ばれる特にユニークなものがあり、

・マナが無くなる代わりに、ライフを消費するようになる
・火属性ダメージしか与えられなくなる代わりに、他の属性を50%分、火属性に変換する
・クリティカルが発動しなくなる代わりに、攻撃が必中になる
・召喚物のHPが33%を下回ると、爆発して周囲に最大HP分のダメージを与える
・敵に対して攻撃した属性の耐性を25%高めるけど、それ以外の属性の耐性を-50%下げる

といった具合に、キャラクターの特性をガラッと変える能力が付与されている。それも、デメリットが大きいため、他のキーノードやユニーク装備と組み合わせたり、ステータスを特化させることで、初めて効力が発揮される。

だから、そこに至るまでの成長や、ギアを入手するまでに最適な構成が変わり、それが遊びの変化につながり、プレイヤーを飽きさせない。

また、ゲームバランスが複雑なジャンケンを構成するように出来ているため、これらの『変化』は、同時に『個性』となり、長所をどう活かし、短所をどう補うかといった部分で、新たな遊びにつながる。

そして、最大の『変化』は、このゲームが『リセットを前提としたMMORPG』だということ。

一つのキャラクターを強化し続けるゲームでは、アップデートを重ねても変化は出しにくい。最終的にバランスが取れていなければ、不満の声が上がってしまうだろう。

しかし、このゲームでは、リーグ毎にリセットされるので、その都度、別のビルドを楽しめるし、バランスが取れていなくても、需要と供給の都合でビルド構築難易度が変わってくるので、その時期の忙しさに応じて、目指すビルドを変えるといったことも出来る。

POEは非常によくできたゲームだけど、唯一問題があるとしたら、この複雑さにあるだろう。
これは、プレイヤーを選ぶだけじゃなく、相当優秀なクリエイターを集められなければ、ゲームとして成立させることが出来ない。


まとめ

今回はゲームのコア部分のシステムについて言及したけど、それ以外にも、『イベント』や『インスタンスダンジョン』といった部分でも変化を出すことが出来る。

しかし、それはあくまでも+αであり、そのゲーム本来の面白さとは言いにくい。
何より、実装にコストがかかるし、それだけに頼るような作りには問題があると思う。

また、複数キャラを育成させることにより『遊びの変化』を出す場合、『遊び方の強制』にならないように注意する必要がある。

例えば、キャラクターを作る程、利点が増えるといったシステムだと、ビルドを楽しむより効率を優先して、育てやすいキャラをいくつも育ててしまうことが考えられる。

他にも、カンストが早く、帰属要素も少ない場合、金策キャラクターばかり動かして、本来のメインキャラクターをほとんど稼働させないといった事態に陥りやすい。
(経験値とは、ゲームにおいて最大の帰属要素ともいえる)

そうならないためには、帰属要素をちゃんと設定し、三つ巴のバランスや、PT向け、ソロ向けといった具合に、いろいろな違いを出すことが重要となってくる。

前回紹介した、『リセットを前提としたMMORPG』は、この『遊びの変化』が無ければ、結局同じことの繰り返しになるので成立しない。

だけど、それは普通のMMORPGにも言えることで、『遊びの変化』を意識することが面白いMMORPGを作るために重要なことなのだと言える。

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