【ゲーム論】MMORPGのモバイル化について思うこと


最近はPC向けの大型MMORPGより、スマートフォンを主としたモバイル端末向けのMMORPGが作られることの方が多くなってきたと思う。

MMORPRをモバイル化させるメリットは、近年のスマートフォンの爆発的な普及率の増加と、何処でもプレイできるのでライト層も取り込みやすいということ、他に、開発費を安く押さえることが出来るということが考えられる。

なぜソシャゲが流行ったかは『MMORPGと価値観の共有』で詳しく書いたけど、MMORPGをモバイル端末向けに作るということについては触れていなかった。僕の考えとしてはMMORPGをモバイル化させるというのは、はっきり言ってあまり賢い方法ではないと思っている。

今回はこの『MMORPGのモバイル化』について、僕の考えをまとめたいと思う。




MMORPGがモバイル化に向かないと思う理由

MMORPRをモバイル化させるメリットは前述のとおり、以下の理由があると思われる。

・PCMMORPGよりも開発費が安く済む
・スマホの方が普及率が高い
・どこでもプレイすることが出来る

まず、開発費が安く済むというのは技術の進化とともにすぐに肥大化するため、さして利点があるようには思えない。

次に、どこでもプレイできるという点に関しては、様々なコンテンツが存在することがMMORPGの魅力でもあるわけだから、PCMMORPGでも全てでなく、一部の機能だけスマホと連携させるようにすればいいだけの話だと思う。

最後のスマホの普及率については、たしかにスマホしかもっていないユーザーをターゲットに出来るというのは否定しようのない利点だと言える。ただこれは上記のスマホに連動させる方法で相殺可能だと思う。なぜなら、PCとスマホを両方持っているユーザーが、あえてスマホ向けMMORPGを選択するとは考えにくいからだ。そこまで遊ぶ時間がない人はMMORPGよりもポチポチゲーを好むように思われる。

また、操作系の問題も上げられる。

スマートフォンの場合、ディスプレイと操作部分が一緒の為、複雑な操作が難しい。3Dや自由移動といった本格的な作りであればある程、タッチパネルとの相性の悪さが目立つ。さらに、そういったMMORPGのほとんどが画面を横に向けて操作するわけだけど、スマートフォンの小さな端末を両手で長時間操作するのは結構疲れる。

それを解消するために入れ込まれたのが自動(放置)戦闘なのだと思われるが、これはこれで別の大きな問題をはらんでいる。

まず、放置することに制限が無い場合、常に放置し続けるプレイヤーがいる以上、それを前提としたバランス調整が行われるようになる。プレイヤーは、最初のうちは他のことをしていても勝手に成長してくれるわけだからお得感を感じて楽しいと思う。でも、ある程度遊んで、ゲームの理解が進んでくると、ゲームバランス自体が放置を前提とした調整がされていることに気が付く人も出るだろう。

そうなると、常に端末を起動させなければならないことが逆に苦痛になる。特にスマートフォンのバッテリーを過剰に消費するのは端末の寿命を大きく縮めることになる。スマートフォンしかもっていないプレイヤーには学生が多いわけで、オートバトルが採用されないPC以上に相性が悪いように思える。

僕は『MMORPGをモバイル化』させるというよりも、逆に『ソシャゲをPC向けにMMORPG化』させるという考え方を提唱したい。といっても、実際にソシャゲのシステムをMMORPGに適用するのではなく、構成要素を抽出し、それを反映させようという意味で。


帰属要素の重要性

ソシャゲが流行した理由の一つに、徹底した帰属要素があることは『MMORPGと価値観の共有』で説明した通り。例えMMORPGをそのままモバイル化させたとしても、オートバトルに加え自由な取引まで可能なら、業者じゃなくても公式BOTを使った業者プレイをする人が現れてしまうだろう。

勿論、制限の無い自由な取引を実装しているモバイルMMORPGは無いとは思うけど、重要なのはソシャゲでは当たり前の帰属要素の部分にあることが理解できると思う。

問題は、業者が市場に介入することでプレイの価値観が著しく低下させられてしまうことにあるのだから、PC向けMMORPGをそのままモバイル化させたとしても、ただスマホでMMORPGが出来ると言うだけではすぐに廃れてしまうことは明白だろう。

ただこれは、必ずしも帰属させる必要があると言っているわけでは無く、RMTの影響を受けない取引システムを実装すればいいだけの話である。


例として『黒い砂漠』では『価値観の共有を阻害しない取引』が実現できているので、やりかたによっては可能だと言える。


モバイルとの連携

これは『MMORPGとVR』でも書いたけど、幸いなことにMMORPGには様々なコンテンツが存在するのだから、出先でも遊べるように、スマホに適したものだけスマホ対応させれば問題ない。

モバイルでも出来そうなものとしては、釣り、栽培、カジノ、製造、マーケット取引などが考えられる。それも、ただできるというだけじゃなくて、ミニゲームを通じて結果を変えられるように出来ればなおいいと思う。

例えば『エバークエスト2』のクラフトシステムだと、ミニゲームを通じて生産品のクオリティが上げることが出来る。


これならスマホとの相性は高そうだし、こういったことが出先でも出来るならモバイルMMORPGよりも需要が出そうに思える。やり方次第で本格的なPCMMORPGでも、ソシャゲ層を取り込むことが可能なのではないだろうか。

他にもソシャゲを意識するなら遠征のようなシステムを追加するのも面白いと思う。先にオートバトルの問題点を挙げたが、放置要素自体は時間のない人でも楽しむことが出来るので、『価値観の共有』の概念から言ってもとても重要であると言える。肝心なことは0か1かではなく、どの程度の制約を設けるかの部分にあると言える。


横に広いゲームデザイン

横に広いゲームデザインをしているMMORPGと言えば、僕の中では『ラグナロクオンライン』が真っ先に思いつく。具体的には、属性相性が豊富に設定されているので、状況に特化したギアを集めたり、ビルドを構築するような遊び方をすることが出来る。

これは今のソシャゲも同じで、大抵は各属性に応じたキャラを複数集めてそれを育成し、PTを編成するようなタイプが主流となっている。

その利点は以下のものが考えられる。
・キャラは2Dの1枚絵なのでコストが非常に安く済む。
・キャラをそれぞれ育成できるので、やり込み要素が非常に高い。
・収集物が増えるのでガチャのシステムと相性がいい。

これはPCMMORPGにも同じことが言えると思う。今のMMORPGはひたすらコンテンツを追加していく縦方向なデザインの物が多いが、コンテンツ追加のコストがバカにならないし、やり込み要素としても微妙である。

MMORPGの育成におけるゲームデザインをタイプごとに分類すると、以下のようになると思う。 ◇キャップ開放(縦スケール)形式. キャップ開放やエンドコンテンツの追加等、縦方向のアップデートがメインのタイプ。 ワールドオブ...

ソシャゲの場合、縦方向のアップデートが少ない分、イベント形式でのコンテンツや、キャラの追加等を通じてやり込み要素を増やしていくようなゲームデザインをしているけど、それらはPC向けMMORPGにも流用することが可能なのではないだろうか。


最後に

ソシャゲとMMORPGは同じオンラインゲームであり、生活に密着した長期的に遊ばれるゲームだから、システム面で似ている部分はとても多い。むしろ、今のソシャゲのほうが黎明期のMMORPGに近いような気さえもする。その理由はやはり『操作性の単純さ』『横に広いシステム』にあるんだと思う。逆に今のMMORPGは『複雑な操作系』や『コンテンツ消化型の縦に広がるシステム』が主流であり、本来あるべき姿とは別の進化を遂げてしまったような気がする。

コンテンツ消化型のMMORPGはキャップ上限開放時にギアが更新されるので、プレイヤーの足並みをそろえることが出来るというメリットがあるわけだけど、価値観を共有させるために価値観をスケールさせるのは、悪く言えば『価値観のリセット』であり、それってMMORPGと他のネトゲとの最大の違い、つまり、『魅力』までも消失させているような気がしてならない。

勿論、これはあくまでも度合いの問題であって、ソシャゲでも運営が長引けば、縦に広げる必要が出てくるし、今までを無にするようなキャラの追加もよくあることだ。


今回のゲーム論は『MMORPGのモバイル化』から、『ソシャゲをPC向けにMMORPG化』させる考え方について書いたけど、将来的にはこういったMMORPGがいくつか作られていくのではないかなと思っている。

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