【ゲーム論】2000年度秋東京ゲームショウレポート

僕の通っていた専門学校では東京ゲームショウを見学する課外授業があった。おそらく僕のところだけじゃなく、ほとんどのゲーム製作系専門学校が参加していると思う。

僕が通っていた学科はゲーム制作研究科といって、通常の2年制のゲーム制作科とは違い、3年制だったんだけど、その間に開催された2000年秋と2001年秋の2回分は『ゲームショウ調査報告書』なるものを提出する必要があった。

今回のゲーム論は今までと趣向を変え、僕が当時書いたレポートを(あまりにも長くなるので)2回に渡って掲載しようと思う。これを読めば、当時のオンラインゲーム市場、特に日本のゲーム業界における存在感というものが何となく伝わるかもしれない。少なくともオンラインゲームが好きな人なら少しは楽しめると思う。

ちなみに誤字はあえて修正していないので見にくいと思うけど悪しからず。


 
1、エイジ オブ エンパイアⅡ

最初にレポートするのはマイクロソフト社のブースで紹介されている9月22日発売のエイジ オブ エンパイアⅡ拡張パックだ。ゲームショウ開催日時に発売されるのは実際にこのゲームを会場で触れてもらい売り上げに繋げようとしているのだろう。

前作をプレイしたことがないせいか、どうすればいいのかはじめは戸惑ったがプレイして、このゲームは基本的に外国のシミュレーションゲームによくある、自分の領地を発展させ、早く相手の領地を制圧したほうが勝ちといったものであり、用意されたシナリオでプレイするよりもネットワークを通じて人間同士の戦いをすることのほうに魅力のあるゲームであることが分かった。 しかし、従来のものより完成度は高くリアルである。 そして、マイクロソフトと言うだけあり、実際の歴史を基に作られている点は他と大きく異なり、いろんな国の文化を楽しむことが出来るところがこのゲームの魅力だろう。 そのため、各建物が何の役割を果たすか非常に理解しやすく、リアルな戦術も立てやすくなっていると言える。
コンクエストキャンペーンモードではこの特徴を大きく生かし、実際にあった戦争の歴史をプレイすることが出来る。

基本的なルールはおそらく家を建てることで最高ユニット数を増やし、ユニットは狩をして得た食物で作る、そして家は木々を倒して得た木材で作られるというものだろう。 ここで面白いのは兵士として作られたユニットは食物や資材の調達は一切行わずに戦闘しかしないところだ。 ユニットの役割が分担されていることにより、何をどれだけ作るかが勝負の行方を左右する。

インターフェイスの面ではコマンドボタンに実行内容を示唆する絵が、かかれているため命令を出すときストレスを感じずにすむ。 また、普段あまり使われないシステムボタンは小さくまとめられプレイ画面が見やすくなっている。
ユニットが建物の影に隠れると、ユニットの形に緑で縁取りされるため、隠れたユニットが見やすいところもこのゲームの特徴と言えるだろう。

このゲームの面白い点はいろいろな国の歴史を知ることが出来る点も挙げられるが、複雑さを省略せず、いかにプレイヤーにそれを理解させ、ストレスを感じさせないか、といった心使いにもあるような気がした。

 

 
2、エランシア

『エランシア』はネクソンジャパンから発売予定の韓国で作られたゲームである。
同社から発売された韓国産の『風の王国』は世界初のグラフィックインターネットゲームと呼ばれている。 現在、『エランシア』は試作段階でありブースに置かれていたのもβ版だったようである。 ゲームショウでは実際にプレイしなかったが、同じ物が配布されたCDに収められていたので家でゆっくりプレイしたことをレポートする。

最初にはっきり言ってしまうと、自分は以前、《日本初》をキャッチフレーズにしたオンラインRPGをプレイした経験があるのだが、それと比べると確かに日本産のほうが技術は進んでいるが、システム(インターフェイス)は断然、韓国産の『エランシア』のほうが優れていると言える。
『エランシア』はゲームを始めるとすぐインターフェイスの説明とそれの慣れの為のチュートリアルに入る。 それを済ませないと外には出られない仕組みである。 しかし、《日本初》はそういったチュートリアルが一切無く、ゲーム発売から1年以上実装されていないようなシステムのかかれたマニュアル一冊で、いきなり首都の中心に投げ出されてしまう。 グラフィックこそ3Dを使用した美しいものとなっているが、3000人同時プレイを魅力としながら実際は300人でも不安定と言った具合である。
そして、『エランシア』のゲーム画面はすっきりとまとめられ、画面が見やすいようボタンが小さくまとめられ、ウィンドウも右クリック一つで閉じられるなどの操作性も考慮しているのに対し、(当初の)《日本初》はすべてが子ウィンドウで表され、しかも、それをドラッグで移動させることが出来たため、実際のプレイ時にポイントが子ウィンドウにさえぎられ操作に苦しめられた。
他人との違いや個性の出し方も『エランシア』では見た目の部分に、顔、髪形、髪の色、肌の色と、装備によりグラフィックが変わるなどで、職業は3系統それぞれ8個程度となっているのに対し、《日本初》は服の色(服は固定)4色と、2系当それぞれ2個とお寒いものだった。
《日本初》のいいところをあげれば『エランシア』より世界設定が面白いところだがはっきり言ってそれを生かせていないと言える。

今回のことから日本のゲームは技術こそ進んでいるものの、ゲームのことをよく理解せず、システム面で損しているように思われた。むやみやたらにシステムを簡単にせず、理解しやすい方法をもっと考えるべきだと思った。

 

 
3、バトルトップ

バトルトップとはゲームではなく、オンラインゲームのランキングを決める世界初のインターネットランキングサーバーを提供している会社だ。
ソフトでないものをレポートするのは今までのゲームの楽しみ方に、新境地を開くことが出来るのではないかと思われたからである。 と言うのも、ランキングでトップゲーマーになるか、年に数回行われる大会で賞をとると破格の賞金や景品が支給されると言うのだ。 これにより今までいくらゲームが好きでも、損得勘定で言えばただの暇つぶしだったゲームに、それを仕事としてお飯にありつけるという時代が来たのである。
現在運営しているゲームは戦略シミュレーション、シューティング、スポーツ、パズルなど多彩である。 その中には先にレポートした『エイジ オブ エンパイアⅡ』も含まれている。

バトルトップのブースでは一、二十台のパソコンが置かれ、同じブース内のパソコン同士で『STAR CRAFT』と『TIBERAIN SAN』をプレイできるようになっていた。 『STAR CRAFT』は自分もプレイしたことのあるゲームで、人間、エイリアン、宇宙人のような3つの種族から一つを選び対戦する『エイジ オブ エンパイアⅡ』に似たシステムのシミュレーションソフトだ。
このゲームの魅力は長い間、主な戦略が変わる事が少なくなかったことから優れたゲームバランスにあると言える。

話が変わるがステージでは韓国のプロゲーマーをゲストに迎え、見たことの無いゲーム初心者のアイドルと『TIBERAIN SAN』で対戦させると言う見世物をしていた。 ゲームを開始する前はマシンにトラブルがありなかなか開始されなかったが、いざ開始しても残念なことに自分のプレイしたことの無いゲームであったため何をしているか分からず、このプロゲーマーのどこがすごいかは分からなかった。 しかし、韓国では子供の将来なりたい職業でプロゲーマーはベスト2だと言うのだからかなりすごいのだろう。
現在運営しているゲームの中には日本のゲームは無いので、日本人の注目を集めれば日本製のオンラインゲームも増えることだろう。

将来、今の電話回線で無く、光ファイバーでつながれれば海外でも通信速度によるタイムラグはほとんどなくなり、より活気のあるものへと成長する可能性を秘めているのではないだろうか。

 

 
今回のゲームショウの動向としては、3Dが多くなったことや、実際に体を動かしたりする体感ゲーム、携帯出来るゲーム、そしてオンラインやパーティーゲームなどの多人数で楽しむゲームが増えたように思える。
今回のレポートはこの中でゲーム業界に活気を与えることが出来ると思われるオンラインゲームを中心にレポートした。

現在のゲーム業界は活気が無いと言われているようだがそれにはいろいろな理由を挙げることが出来る。 自分は基本的に、技術が進むに連れて多くのユーザー獲得のためストーリー面やグラフィック、戦闘シーンに凝る一方、システムとしては敷居が低く分かりやすくなる反面、楽しさを持続できない、飽きやすいものになってきているためではないかと思っている。
ゲームというのは基本的にシステム、シナリオ、グラフィック、音楽で構成されている為、分かりやすいシステムにするのがよくないと言うわけではないが、噛み応えがあるシステムでないといくら他の要素を上げても同じメディア、特にアニメや映画には到底かなわないと言える(コスト面でも)。 お金と手間をかけてこれらの構成要素を上げると、多くの客層に受ける為にシステムの面で敷居の低いマンネリ化しやすいものになるという、ゲームの利点をいかさない矛盾した進化をしているのではないかと思う。 そのためSLGだけでなく、シナリオ重視のRPGにも、近くの人と、対戦できるなど、コミュニケーションをとることのできるものが多くなったのだと思う。 ポケモンのような人間同士で対戦できるものは直接ストーリーに関係の無い戦闘などにプレイすることの意味や楽しさを与え、飽きがこないものにしているのだと言える。

今のゲーム業界に活気が無いとは言え、ゲームには他のメディアにないような将来性がある。それが今回レポートしたインターネットを介したオンラインゲームである。
これの素晴らしい点は、今までの狭い範囲のコミュニケーションをとる楽しみ方のゲームに、より強い意味を持たせると共に、その範囲を広げるところにある。 そして、対戦型のものは人間対人間の、より興奮する臨場感を味わうことが出来ることにあるだろう。 実際、自分も昔オンラインRPGにはまったことがあるが、戦闘や会話、取引など、自由にそこで生活を営み、今までに無い新しい感動を覚え、すぐ止める予定だったのに半年も続けてしまった。
そして、もう一つ注目したい点にコピーソフトが出回るのを、押さえることが出来るというものがある。 これは現在実行されているか分からないが壮大なオンラインRPGなどはプレイヤーの中からサーバーを決めるわけにはいかないので企業が用意しなければならない。 その際ユーザー登録にCDキーなどを入力すれば容易に分かることである。
これにより企業は需要が増え値段を低く設定することも出来るだろう。 そうなれば現在活気の無いゲーム業界が活気を取り戻すのも間違いないと言える。

これらのことからゲームはさらにコミュニケーションを重視した形になっていくと思われる。 そして、これから今以上にオンラインゲームが普及すれば、ゲーム業界の未来は明るいと言えるのではないだろうか。

 

どうだろうか。特にフォーマットを指定されたわけでは無いので、一つ一つのゲームにスポットを当てた形式をとったんだけど、今でもそれが正しかったのか分からない。でも、今見ると当時のことがよくわかるし、逆に面白い。それに、着眼点が素晴らしいと思うのは自分が書いたレポートだからだろうか?w

とりあえず注釈しておくと、《日本初》のMMORPGとは『ダークアイズ』というゲームのことだ。このゲームはとにかくバグが多くて、ステ振りはできるものの、ジャンケンのような3つ巴のルールではなく、ダメージ計算式も足し算引き算でとてもバランスの悪いゲームだった。

また、この時代の国産コンシューマーゲームというのは本当にゲーム性の無いゲームが多かった。僕がゲームクリエイターになろうと思ったのは、僕が楽しめるゲームを誰も作れないなら僕自身で作るしかないと思ったからだったりする。

今では当たり前のオンラインゲームも、このころはインターネットが一般的に普及され始めたばかりでほとんど注目されていなかった。そんな中僕は、ゲームは将来オンラインが主流となり、MMORPGこそ全てのゲームジャンルの頂点に君臨するのではないかと予想していた。

まぁ、実際にオンラインゲームが主流になったわけだけど、MMORPGの地位というのは予想と大きくかけ離れてしまった。結局、僕が自分自身で作らない限り、本当に満足できるものなんて出来ないってことなんだろうけど、そこまでの導線をどう引けばいいのか分からない。とりあえず、こうやってブログに書くことで何かがつかめると思ったんだけど、全く見えてこないから困ったものだw

0 件のコメント:

コメントを投稿

お気軽にどうぞ。

※他の方から見て不快になるもの、記事の内容から逸脱したものは削除することがあります。
 管理人からの返信は必ず行われるわけではありません。