【ゲーム論】MMORPGと視点制御の重要性

既にサービスが終了したゲームに『ヘルゲート』というMORPGがある。これはTPS視点の3Dアクションシューティングゲームで、ビルドの概念とトレハン要素の高い、非常に僕好みのゲームだった。

実際、どんなキャラを作るのか、頭の中で妄想している時点では相当楽しませてもらった。ただ、思っていたほどハマること無くプレイするのを辞めてしまった。

その理由はいくつか心当たりがあるのだけれど、最も気になったのが、プレイしていて非常に疲れるという点だった。

今回のテーマは、長時間プレイすることが前提となるMMORPGにとって、とても重要となる『視点制御の重要性』について書いていきたいと思う。




ヘルゲートから見る視点の動き方

*参考動画:オフライン版だけど当時とほぼ変わっていない。

このゲームの基本的な戦闘シーンの大まかな流れを説明すると、雑魚敵を倒し、トレハンを行いながら、複雑に入り組んだダンジョンを探索し、最奥にいるボスを倒すことでさらに多くの報酬を貰えるといった感じ。

問題は、索敵と探索によるユーザーの視点の動き方の部分。

まず、敵がミニマップ上に表示されず、四方八方からわんさか沸くため、倒すには常にカメラを回転させる必要がある。さらに、次のマップへの入口は、近くまで行ってミニマップを見ないと見つけることが出来ない。カメラを回すことにより方向感覚が狂うため、自分がマップ上のどっちを向いているか把握するには、こまめに右上のミニマップを確認しなければならず、視点が全く落ち着かない。

PvPが前提のFPSの場合は、相手も同じ条件がなのだから、視認性の悪さもゲーム性につながるわけだけど、PvEが前提のMMOで、長時間ファーミングすることを考えると、とてもMMOに向いているとは言いづらい。


ドラゴンネストから見る視点の動き方

ヘルゲートとよく似た視点を持つゲームにドラゴンネストというMORPGがあるのだが、こちらはプレイしていて全く疲れなかった。

ドラネス_162_4gamer
(4gamerより引用)

ミニマップが右上や左上でなく、画面中央下に存在している。さらに敵の位置を赤い点でマークしている。これにより、3Dゲームの迫力を維持したまま、2Dゲームならではの分かりやすさを共存させることに成功している。状況を把握したければ、少し視点を下にずらせばいいだけだ。

最近だと3DSのドラクエ11なんかがこの点をうまく押さえている。

FF11_006_4gamer.jpg
(4gamerより引用)

ちょっと話題になったから、覚えている人も多いと思う。こちらは2D画面もメイン画面としての役割を持っているから意味合いが違ってくるけど、やっぱり2Dと3Dの良さを両立させることに成功している。

他にも、非常によくできた視点制御システムに、瀕死になると画面を赤くするというものがある。これはいろいろなゲームに取り入れられているけど、これが無いゲームは、必然的にHPゲージを確認する回数が増えるのでとても疲れやすい。

これらのことから分かることは、視点の動きを押さえることでプレイヤーのストレスを大きく軽減できるということだ。


視点の制御の概念の応用

上記の点を踏まえて、視点制御の重要性を、僕が作ったTree of Saviorのアドオン『pointing』を例に説明したいと思う。


これが何をする目的のアドオンなのかは動画を見ればわかると思う。なぜこういったアドオンが必要だったのか、それを説明する前にTOSとROのモンスターの違いについて知ってもらう必要がある。


まず、ROの場合の特徴は以下の通り。

・敵が画面内に入った瞬間機敏に反応する。・ほとんどの敵に待機SEと歩行SEが設定されており、どこにいるのか耳である程度判別できる。・解像度の低い3D背景に対して、敵が書き込まれたドット絵なので非常に目立つ。

次にTOSのモンスター。

・アクティブモンスターでも(ほとんどが)近づかないと反応しない。・ほとんどの敵が無音で、耳を使ってどこにいるか判別することが出来ない。・解像度の高い3D背景に、同じタッチの3Dキャラなので、溶け込んでしまい視認しにくい。
TOSはこういった理由から、ストレスが溜まりやすく、長時間プレイするのに適していなかった。これに対してpointingでは、敵にポイントを表示して視認しやすくしている。また、それだけでなく、敵が画面外から出た時に表示される黒い枠は視点制御の概念に基づいて実装した機能だったりする。

人の目というのは焦点のみをはっきりと表示し、それ以外はぼやけて表示させるようにできている。そのため、赤い点だけでは焦点以外のぼやけた視界で視認することはとても難しい。画面の端まで見ようとすると、どうしても視点の移動が発生してしまうのだ。そして、視点を端まで動かすと、反対端にある対象はさらに視認しにくくなってしまう。そうなると、索敵のために頻繁に視点を動かす必要が出てきてしまう。

そこで、敵のいる方向に黒い枠を表示して、焦点の合わないぼやけた視界でも敵の存在に気が付けるようにした。実際の効果だけど、作者の僕が言うのもあれだけど、視点の移動が抑えられ、狙った通りの結果が出ていると思う。

他にもこの考え方の応用として『Cooldown Tracker』を改造したものがある。


まず、TOSの基本として、バフの効果時間が左上に表示される点に注目してもらいたい。しかも、このバフは、自分が担当するもの以外にも、PTメンバーが使用したものも一緒くたに表示される。

次に、バフのクールダウンは画面下にあるショートカットを見ないと分からない。ちょっと想像してもらえばわかると思うけど、バフを無駄なく効率よくかけなおそうと思ったら、画面下のクールダウンと、画面左上の沢山のバフの中から自分の担当するバフの効果時間を何度も確認する必要が出てくる。もちろん、他のバフのクールダウンが同じとは限らないし、何かしらの要因でタイミングがずれることもある。攻撃だってしないといけないのに、これではちょっと尋常じゃないレベルで疲れる。

そこで、自分の担当するバフを、再利用のタイミングのみ画面中央に表示するようにした。こちらも、自己評価だけど、非常に高い効果が出ていると思う。


最後に…

今回の概念は、前々回の操作性の概念と強いシナジー関係にある。というのも、ショートカットが多ければ、それだけ重要な見やすい位置の視界を遮ってしまうし、クールダウンスキルが多ければ、それだけ視点をそこに移動させる必要が出てくる。

それがゲーム性だというクリエイターもいるかもしれないが、それならそれで、分かりやすくする努力が必要だ。

何度も言っているように、MMORPG(MORPG)というのは長時間遊ぶことを前提としたゲームだ。視点制御の概念を考慮せずにゲームをデザインするのは間違っていると理解してもらいたい。

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